学のない僕が本を読んだ

いろんな本の感想を綴っています。参考にならないものがあるのも悪しからず。

【感想】ナミヤ雑貨店の奇蹟(東野圭吾)ネタバレなし

 東野圭吾さんの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を読みました。ほっこりする小説ですし、先が気になる展開、読み進めるうちに点と点が結ばれていくところは見事でした。

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫)

 

内容(「BOOK」データベースより)
悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!? 

 読んでいる途中で思い出したんですが、物語の進み方はプレステやセガサターンで発売された「街」に似ていますね。

 10代の人たちは「街」がどんなゲームか分からないかもしれませんが、知る人ぞ知る名作なんです。「街」を知っている方は、この小説を読むとちょっと思い出すかもしれません。

 

 「ナミヤ雑貨店」というお店が始めた悩み相談。その悩み相談を通して物語は動いていきます。

 本作品の中では悩み相談というのは手紙のやりとりによって行われます。ですので、悩みに回答する側のナミヤ雑貨店は文字の情報のみで、相手の悩みに対峙することになります。

 悩み相談ってすごく高いコミュニケーション能力が要求され、相手が言っていることが、そのまま相手の思っていることとイコールではないんですよね。「AかBか迷っているんです」と相談があったとしても、もしかしたら本人の中では「Aを選ぶって決まっているけど、一歩踏み出せない」っていうこともあるし、「実はCっていう選択肢もあるんですが、それは書かないでおこうかな」とか「Dっていう背景を隠したまま相談しよう」とかもあるでしょう。悩み相談に答える側っていうのはそういう裏事情なり、心理なりを読み解かないとなかなか的確な回答ができません。

 ただ、的確な回答ができないからダメかというと、そうでもないと思うんです。悩み相談の一番の利点っていうのは、誰かに話すことによって自分の思考・状況を整理できること、です。答えが出せなくても悩みを聞くことに意味はあるし、答えを出すよりはむしろ話を聞き出す能力のほうが大事なのかな、もしかしたら。

 ナミヤ雑貨店の悩み相談という親父ギャグのような話ですが、心が暖かくなる小説です。ぜひぜひ読んでみてください。